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DATE: 2009/09/08(火)   CATEGORY: かもかてSS
漫浪正大
公式、ヴァイル分化後(男)がですね、死ぬほどかっこよくて一回見て思わずウィンドウを最小化してしまいました。
そのくらいかっこいい。やばい。うはー。

彼でエロ書いたというのが死ぬほど申し訳ない。
しかしまた書く。そんな現在。


・無礼会メンバーの方のブログで見かけた大正という単語に明治くらいの小説好きの血が騒いだので無礼会未参加のくせに書いた
・大体羊さんの設定のパクリ、ただ書生は住み込みの下働きなのでタナッセはむしろ実家から送金してもらってる下宿生の延長とか裕福な家の若旦那とかそういうベクトルを想定してます。要は高級ニートで(ry
・漱石の三四郎とか虞美人草あたり参考にしようと思ったのに部屋が汚くて見つからねぇ
・銀時計=帝國大学(今の東京大学)を首席で卒業するともらえるらしい
・長く書きすぎて途中で飽きた超飽きたマジで飽きた
・というわけで文章が途中から普通に戻ります
・焼き菓子=カステラ

以下、即席大正もどきパラレルSSになります。


紬の反物を手に紐解いて、ヴァイルはじっと目を凝らした。けだし美とは悪の産物である。艶と手触りとを確かめつつ、染めの出来栄えはまぁ優をつけてやってもいい、などと思う。百年ほど続く呉服屋の当代店主である彼は品にうるさい。
とはいえ、現在において彼の活発な頭を支配している問題は必ずしもそこではなかった。口先はいっぱしの呉服屋でも、所詮は未分化の少年、心には可憐な部分も一応持っているのである。
「こういうのがさ、ホントに受けるわけ?」
思い切ってそう尋ねると、トッズとか言う商人は鷹揚に膝を叩いて受け負った。
「そうそう! ちゃーんとレハトから聞き出してきたからね。そういうのがレハトの好み」
「……まぁ、品は悪くないけどさ」
そう言って、ヴァイルは再び反物をいじくって、質の批判的点検にかかった。
だが決して悪い品物ではない。趣味としても尋常である。店に置いておいても花簪した若い女なぞを相手にそれなりに捌けてゆくであろうことは疑いもなかった。
だからこそ、何とはなしに胡散臭くもある。けちをつけたくなる。
「んで、買うの? 買わないの? 買ってくれるなら特別に愛の人形つけちゃうよ? 願いを込めると思いが届くふわっふわのお人形さんですよ? 欲しくない?」
慧眼を自負する自らの目を以ても、反物に特別瑕疵だの荒だのが見いだせなかったことにわずか嘆息する。
もとより商人の口上が胡散臭いだけで品は良いのであるから、呉服屋としては買うより他がない。
他の物と混ぜこぜにして店にでも広げておいて、レハトが来れば見せれば良いであろう。
そう判断して、ヴァイルは算盤を挟んでトッズを相手の商談に取り掛かった。
買うと決めれば、彼は明晰な人間だった。



反物と一緒に、妙な人形が床の上にある。
上がり框に腰かけて、客が来るまでの辛抱と、戯れにその愛の人形とやらを捻っていると、不意に開け放された戸から何者かが入ってきて、それがヴァイルの脇から影となってぬっと差したものだから、慌てて見やるとそれはよく見知った従兄だった。
「掃除もせずに人形遊びとは、儲かっているようだな」
「タナッセに言われたくないんだけど。何しに来たの?」
反りの合わぬ従兄とは、厭味の応酬も毎度のことだ。
毎度タナッセの方から吹っかけてくるのがヴァイルには詰まらない。
このタナッセ=ランテ=ヨアマキスという男、ヨアマキスの若旦那だか帝國大学で詩を学んだ銀時計だか何だか知らぬが、何かと厭味たらしい言葉使いで付きまとってくるので甚だ癇に障る。
「……何、その、父に会う用事があってな。寄ってみただけだ」
タナッセはそれだけ言うと、不意に肩を落とした。
今日は何だか生真面目になっている。背広なぞ着ている。普段絣や小紋を引っ掛けている時のような、どこか崩れたような立ち振る舞いではなく、西洋人のようにしゃんしゃんと立っている。その上に普段通りの卵のように特徴のない顔が載っている。洋袴には足が切れそうな折り目がついている。首に舶来のクラヴァットが巻きついているのが、ヴァイルにはあたかも蛇が巻きついているに見えてさらに剣呑であった。
タナッセの方ではこの異様な風体に何かのっぴきならぬ事情でもあるのだろうが、傍から見る分にはいつもの書生じみた装いの方が安息である。
常に似ぬタナッセに、思わず他人のような気になってこちらも冷たい言葉が出た。
「そんな格好しちゃって、何のつもり? 似合ってないんだけど」
「いや……それがな……」
改まって菓子折りなど差し出してくるのがまた奇妙である。
受け取ると軽い。焼き菓子だと見当つけてヴァイルは奥へと引っ込んだ。元来ずるずるした洋装や、にやけた面をしたハイカラ物なぞは一切好まぬ彼であるが、焼き菓子と舶来地図だけは例外である。だがビーンズなどというものは断乎嫌いである。
女中に茶を淹れさせ、分厚く切った焼き菓子を持って戻ると、タナッセは既に図々しくも、いや呉服店なのだから図々しいということもありはしないのだが、兎にも角にも店へと上がり込んで待っていた。
見ていると、タナッセは背広の肩を怒らせて正座したまま、ああともううともつかぬ呻き声をあげていたが、その細面の顔が突如としてがばとヴァイルに突きつけられる。ヴァイルは猫のようにのけぞった。
どうにも今日の従兄は剣呑である。
「な、何」
「実はな、ディットンに行くことにしたのだ」
動揺を鎮めるために黄色い焼き菓子をむしって口にすると、甘い柔らかさが舌に快い。ディットンという地名は知っている。何があって何が特産でどういう歴史がある街なのかも知っている。地図で覚えたのだ。随分南で、随分遠いということも知っている。歩いては行かれない。数多の兎鹿をしゃかりきに運動させて、恐ろしいほど車輪を回して、それで行くのである。
「何で……」
やっとのことでヴァイルがそれだけ言うと、タナッセは一つ溜息をついた。
「いや、本格的に詩を学ぼうと思えば、どうしてもディットンに行かねばならんと思ってな……おそらく、永住することになる」
「そう、そっか。なんか寂しくなるかも。タナッセでも、ほら、枯れ木も山の賑わいっていうか、俺にとってそういうのではあったと思うし、うん」
タナッセがこのフィアカントの土地と反りが合わないということは勿論ヴァイルも認識の上であった。いつか出ていくかもしれないとも、理解してはいた。
世界は一つ所に留まることなどなく、常に流動し、流転している。動かぬのは己だけだ。純朴という粘土で形作ったような兎鹿でさえ、昨日と今日では同じ所に居座るということはない。生きるために、どこかへ行く。
ヴァイルは多分の心残りを抱えつつも物わかりよく頷いて見せたが、だがタナッセの次の句は、さらにヴァイルを打ちのめすに十分なものだった。
「……レハトも、一緒に連れて行くことにした」
「……え?」
耳から容赦なく入るその言葉に、失望の味と焼き菓子の味が胃の腑の中で混乱して、それまで美味しく思っていた焼き菓子が突然生きて跳ねる魚のように生臭く感じられた。
レハト。名前の響きに水を浴びせられたように背が寒くなる。
出会って一年にもならぬのに、彼の意識はややもすれば花に引かれる蝶のようにレハトのことばかりに向いて行く。だが花の方では、もっと別の物に心惹かれていたらしい。
「……」
血の気を失って黙り込むヴァイルには気付かないまま、タナッセが口を開いた。
「結婚を申し込んだのだ。そうしたら、自分もディットンに連れて行ってくれと言って聞かなくなった。お前から友人を奪うような真似はしたくなかったのだが……」
気を遣うくらいなら最初から連れていくな、そう叫び出したいところをぐっと腹の底に押し込めて、ヴァイルは短い人生で得た経験と知識の総動員で取り繕う台詞を探した。
厭味な従兄のことは虫が好かなかったが、それ以上に己の恋を露見させたくはなかった。
「……何、言ってんの? タナッセのくせにさ、俺の心配するより自分の心配しなよ。馬鹿みたい」
年相応の生意気さを滲ませた微笑は、我ながら会心の出来栄えだった。
果たしてタナッセの顔がいつもの渋面に戻って、おそらくは返す厭味を探しているのだろう。
けだし鈍感というものが時に一種の救済になりうるのは皮肉である。
タナッセが詩などいじりまわしているくせに肝心の人間感情については極めて鈍い人間であることに内心感謝しつつ、ヴァイルはタナッセの腕を捕まえて戸口へと引きずった。
「ほら、レハトが待ってんじゃないの。早く行きなよ」
「あ、ああ……しかしだな、来たばかりだというのにこんな」
「いいから!」
気迫に押されたのか、どの道それ以外に用もなかったのか、タナッセは大人しく立ち上がると、ヴァイルの方を気にしいしい、開け放たれた引き戸の敷居を跨いで振り返った。
南向きの戸口からの陽光が逆光になって、それがタナッセの表情を分明ならざるものにしていたが、今さらタナッセのことなど知りたくもなかった。
タナッセが他人のように背を向けて、ヴァイルは不意に大声で相手の名前を呼びたくなるような衝動に駆られて、慌てて戸口をばたんと締め切った。
戸口に背を預けると、否応なしに先程の反物が目に入り、今なら尋常な子供のように泣いてもいいような気にさせたが、泣くならば本当の子供のように、誰かの胸にすがって泣くのが上策と思われた。




ばたんと、背後で弾けるような音が耳を打った。
次いで、それが何の音なのか理解して、タナッセはやりきれなさに大きく息を吸い込んだ。
緩い動作で吐き出すと、久々に来た洋装が体に纏わりついてどうにも不愉快になる。
しかし脱ぎ捨てて走り出すことなどできはしないのだ。
「……済まない」
呟いて、後ろを見ることはしないままに、前を向いて、歩きだした。
彼の妻になるべき人が、待っている。




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